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春陰や盛り始むる鳩の群

小山正見

鳩である。おそらくカワラバトと呼ばれる種類であろう。一般にドバトと言う。
最近の鳩は嫌われ者だ。鳴き声がうるさいし、やたらと糞をする。僕も駅のホームで上空からの鳩の糞をくらったことがある。油断も隙もない。
繁殖力が旺盛で一年の三分の二は繁殖期である。雄鳩が胸を膨らませてグルックグルックと雌を追いかけている場面を見かけたことがあろう。
子どもの時、僕は鳩を飼っていたことがある。
当時は冷蔵庫や洗濯機などの家電製品は、木の枠の中にいれられていたか。電気屋からそれを貰い受け、金網を張り鳩小屋を作った。
近所に大規模に鳩を飼っている人がいて、最初はその人から鳩を譲ってもらった。夕方になると彼の鳩舎の鳩が一斉に空を舞い円を描いていた。羨ましかった。
とうもろこしや小麦、麻の実、胡麻などを配合して独自の餌を作って与えた。
夢は北海道からの鳩レースに出場することだった。
まだ、新聞社の屋上で飼われていた鳩が現役として活躍した時代だ。
夕方になると、トラップ台の上に鳩を出し、毎日訓練した。少しずつ距離を伸ばし、自転車で遠くまで出かけ鳩舎の前で鳩を待った。
しかし、そこまでだった。梅雨時だった。次第に掃除が億劫になり、不衛生な鳩舎で全ての鳩を死なせてしまった。
動物を飼うということは糞尿の始末をするということだと知った。僕は二度と動物を飼うことを止めた。
現在でも日本伝書鳩協会が健在であり、鳩レースが行われていると聞く。
遠い遠い空の上の話だ。