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新緑の映えて疏水の石畳

小山正見

富士市に住んでいるS君を呼び出して三島で会った。S君は児童文化の大家で、昔ながらの友人である。彼は退職後一時九段にある昭和館のガイドをしていたこともある。口八丁、手八丁で話が面白くて飽きない。生き方に共感するところが多い。
「何処に行きたい?」
と聞かれたので、
「桜屋のうなぎ」
と答えた。三島は鰻屋が多い。中でもうなぎの桜屋は有名だ。創業は安政三年だという。一昨年もS君に連れてきてもらった。予約が取れないので、並ぶしかない。覚悟して三島広小路にある桜屋に向かった。
途中、楽寿園の前を通り、源兵衛川に出る。
三島は水の町だ。至る所に湧き水がある。富士山の伏流水で、五年かけてここに辿り着くというのは、S君の説明。
源兵衛川は、楽寿園の中にある湧水、小浜池を源流としている。水量は豊か。川の中には散策用に飛び石や石畳が敷かれ、「街の中のせせらぎ散歩道」となっている。
S君のいうには、工場の取水や生活排水が流れ込み、一時ドブ川のようになったが、市民の運動が復活の力になったということだ。
五月から六月にかけては自生した蛍が源兵衛川で見られるらしい。これも清流のお陰だ。
時間が早かったせいか、幸いなことに桜屋には並ばずに入ることができた。
うなぎと言えば、浜名湖だが、産地から運ばれたうなぎは、一週間ほど、三島の湧水にさらされる。この一週間で、お腹に残った餌や泥が吐き出され、余分な脂肪が落ち、身が引きしまるそうだ。
桜屋では、歯応えのあるうなぎを堪能することができた。
源兵衛川の清流とうまい料理。そして親しき友。人生の至福だ。