【大好評】「咲満ちて小山正見の俳句フォト カルタ」販売中!

戦争の記憶確かに走馬燈

小山正見

月に一回だけだが、グループホームとディサービスで俳句教室を行っている。
俳句教室と言っても、俳句を上手くなろうというのとは、全く異なる。
生活の中の記憶を辿りながら、それを言葉に紡いでいく。それを合作で、五七五の俳句っぽく作り上げるのだ。
「そうだね。そんなことあったね」
とか
「◯◯さんは、あれが好きだったんだ。」
「北海道に住んでいたんだ」
などお互いの情報を交歓し、それをタネに語り合い、笑い合う。
こんな感じの俳句を媒介にした俳句遊びの教室だ。
それでも、多い時は1時間で30句も40句もできる。
しんじゃがをゆでてつぶしてサラダかな
しんじゃがにたっぷりかけるマヨネーズ
おれんちはビールもいいけど冷酒だよ
庭に出て子供とやった花火かな
一ヶ月に一度だけだけど、顔を覚えていてくれている方も多い。「あ、俳句の先生」などと出迎えてくれる。嬉しい。
八月は、テーマを「戦争」とした。
多くの方が私より年上。戦争を経験されている方も多い。
びっくりするほど多くの思い出話が出た。今日の朝ごはんのことは忘れても昔の記憶は鮮明なのだ。戦争は幼き日の苦い忘れられない思い出なのかもしれない。
「B29と零戦の空中戦を見た」
「疎開で親と別れて寂しかった」
「灯火管制で電球に布を被せた」
以下は、グループホームの方の作品である。
ピカドンが二発で負けた日本国
竹やりを持って練習終戦忌
戦争の記憶昭和十三年生まれ
戦争や毎日泣いてた疎開先

何となくしんみりとなった俳句教室であったが、また九月も
「ぼくのこと、覚えてくれてますか(笑)」
と出向くつもりである。