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倒木の沼に亀ゐて蝉の声

小山正見

一昨日は忙しかった。朝は小学生への俳句の授業。午後は八名川句会。そして夜は中原区の100人会議と懇親会。実に充実した一日だった。久しぶりに寝床につくのが午前様になった。
夜が明けて、昨日は何も予定が入っていない。一日中予定なしは久しぶりだ。
思い立って、王禅寺に行くことにした。
王禅寺は、川崎を代表する古刹の一つである。いずれ、「かわさき俳句フォト」に取り上げたいと考えている。その下見という意味合いもある。
Googleマップで行き方を調べた。
すると日吉から横浜の地下鉄グリーンライン、ブルーラインと乗り換えてであざみ野まで行き、バス、というルートが出てきた。王禅寺は川崎市だから、当然南武線沿線からと思っていたのに。
あざみ野に降りたら権八があった。一度入ってみたかった蕎麦屋だ。西麻布にあり、総理だった小泉純一郎がブッシュをもてなした蕎麦屋だ。こんなところにもあるのか。軽く蕎麦を食って、バスに乗った。
王禅寺坂上というバス停で降りた。
Googleマップの地図の通りに進もうとしたが道がない。炎天下をあっちにうろうろ、こっちにうろうろ、通る人もいない。ようやく出会った人に聞いて王禅寺の裏門に辿り着いた。Googleマップのルートとまるで違う。
鬱蒼とした林の中に細い道が続いている。
倒木が放置されている沼で何かが飛び込む音がした。まるで芭蕉の古池のようだ。蝉の声が周囲を囲んでいる。
急な石段を登った先にお堂が見える。緑の楓の葉が陽の光を浴びて揺れている。紅葉の季節はさぞ美しいだろう。
王禅寺の隣は広大な公園になっている。ここもかつては王禅寺の寺域だったに違いない。暑い日差しの中でこどもたちが遊んでいた。
ぼく自身も汗まみれになっていた。
秋にまたくることになるだろうと思いながらバスに乗った。あざみ野に戻るのもつまらないので、新百合ヶ丘に出た。
もう一度Googleマップを開く。はて、王禅寺は一体何処にあったのだろう。最後まで釈然としなかった。