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中秋の名月迎ふる門構

小山正見

中秋の名月だった。

月々に月見る月は多けれど月見る月はこの月の月

俳句の授業で、時々これを使う。読人知らず。
「十五夜は何故十五夜と言うの?」
とチコちゃん並みの問いを投げかける。
陰暦の意味を教えるためである。僕自身についても、俳句を始める前は「十五夜」の意味など考えたこともなかった。
「十五夜の意味も知らずに今日の月はなんと美しい月かと喜んでいる日本人の何と多いことか」(笑)。ぼくもその一人だった。
「月々に・・・」
と朗誦して
「さて、いくつ月が出てきたでしょうか?」
これだけで教室はかなり盛り上がる。
そこが中秋の名月というわけだ。ご自分で数えていただきたい。(笑)
自分自身が詠んだ月の句で、特に印象深いのは、

仕事終へ春満月に迎へらる

という句だ。2010年3月31日の句だ。
覚えているのは、38年勤めてきた教員生活をビリウドを打ち、退職した日だったからである。
後ろ髪を引かれるように、八名川小学校を去り、その帰り道に見た満月がこれであった。肩の荷を下ろした感慨があった。

もう一つは認知症を患った妻との生活を詠んだ句集『大花野』の最後に置いた句、

春満月道なき道を照らしをり

である。今も道なき道は続いている。ずっとずっと道が続いてくれればよいと願っている。
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春満月は詠んだが、中秋の名月にはまだ手が届かない。

件の家は季節ごとに門構の装飾を変えてくれる。いつもその家の前をを通るのを楽しみにしている。