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街にこの人ありて豊の秋

小山正見

この人とは、伊藤博さんのことである。伊藤さんは、長くモトスミ・ブレーメン通り商店街の理事長を務められている。
ぼくは、このブレーメン通りの端っこで生まれた。子どもの頃(1950年代)、周りは田んぼばかり。春になるとあたり一面にカエルの合唱が響き渡った。雨上がりの砂利道を大型バスが水たまりの水をはね飛ばしながら通っていた。
当時は、元住吉西口商店街と言っていた。どこにでもあるような普通の商店街だった。
その商店街がいつの間にか変貌を遂げた。モトスミ・ブレーメン通り商店街になったのだ。全長は、550メートル。商店街に加盟している店は180店舗。一日中、人波の途絶えることない、にぎやかな商店街である。
ブレーメンといえば、ブレーメンの音楽隊。グリム童話だ。駅前や商店街の真ん中には、動物たちの像まで立っている。今では、駅前のかつての小山文具店の壁に巨大な音楽隊のモニュメントが埋め込まれている。名称変更がされたのは90年。34年前のことだが、今でもドイツのブレーメンとの交流を続けられているらしい。
ぼくが一番ありがたいと感じているのは商店街の道路だ。砂利道が舗装され、アスファルトになった。さらに、その上に御影石のタイルで化粧された。しかし、それが割れたり、滑ったりして危ないとみるや、即座にコンクリートの中にその御影石を砕いて混ぜ込んだ絶妙な舗装に変えた。しかも、それに切れ目を入れて石畳のように加工した。頑丈で美しい。ぼくは話を聞くまで、てっきり石のタイルが埋め込まれているとばかり思い込んでいた。
友人がわが家に来ると、異口同音に「商店街が面白い」と言う。店の種類や数が多いこともあるが、一番は商店街の活気だろう。全国各地からの視察が絶えないのもわかる気がする。
福島との交流もあり、フェアが行われる。商店街で使えるカード「ブレカ」は、健康ポイントまでたまる。使えば使うほど、客も店も得する仕掛けになっているという。仕掛けやアイデアが絶妙だ。
このブレーメン通り商店街を象徴しているのが伊藤博さんなのである。その伊藤さんに話を聞いた。話を聞くまで、ぼくは伊藤さんが先頭で旗を振り、ブレーメンを引っ張ってきたという印象を持っていた。それも間違いとは言えないだろうが、それ以上に柔軟で意見の違いを上手にまとめる人だということを知った。
商店街の事務局長の平本さんは伊藤さんを「人の話によく耳を傾け、決断の素早い人だ」と評する。伊藤博さんは、チームブレーメンに活気をもたらした総監督なのだ。
10月6日(日)には、モトスミ風にアレンジしたブレーメンのお祭り「フライクマルト」が迫っている。ブレーメン通りをまだ知らない人は、一度ぜひこの商店街に足を運んでほしい。