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荒梅雨に門倉有希を偲びけり

小山正見

荒梅雨を思わせるすごい雨だった。
川崎FMのスタジオである。キャスターの宮下敏子さんは、写真のように素敵な方で声も透き通るように美しい。
幾分ドキドキしながらスタジオ入りした。
一曲かけるのでCDを持参するように言われていた。自宅のCDラックを漁ったら、門倉有希のCDが九枚も出てきた。一時は門倉有希の後援会に入り、会員証を持ち歩いていたこともある。
門倉有希さんは、この六月六日に亡くなられた。五十歳だったと言う。
キャスターの宮下さんも門倉有希をよく御存知だった。
追悼の気持も込めて、代表曲の「ノラ」をかけていただいた。

話の一つの中心は、句集『大花野』であった。

ここはどこあなたはだあれ大花野

の句が話題になった。宮下さんはおじいさまが認知症を患らわれたという。
「この句が作られた背景を話してほしい」と問われた。
「認知症になると人生は終わりだという人もいるが、そんなことはない。」
という強い思いがあったことを思い出した。
その強い思いがこの句になった
今、妻は車椅子になった。言葉もほとんど出てこない。でも、生きていてくれるだけでも嬉しい。
人間の価値は何ができるかではない。存在そのものだ。
句集『大花野』手にとっていただけるとありがたい。また、お知り合いの方にご紹介いただけるとありがたい。
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そう言えば、父小山正孝も川崎FMに出演したことがあったのを思い出した。
八十四歳の時だ。詩集『十二月感泣集』で丸山薫賞を受賞した時だった。
その中で自身の詩を一篇を朗読している。

一瞬

あなたはカマキリの首をつまんで僕の方にさし出した
いたづらつぽい目をしてくちびるをとがらせて
僕にカマキリを見せた
茶色に緑の線のある細長いカマキリ 下腹をもだえて動かしてゐた
すべての足をさかんに動かしてゐた
「そんなものすててしまひなさい」
僕に言はれて あなたはすぐに草の上にそれを投げた
二人は無言で足早に歩きつづけた
大きい白い月が正面に出て
強烈なつめたい光が僕たちに向つてゐた
さつき見た事で僕は非常に怒つてゐた
カマキリの小さい三角の顔があなたに向つて笑ひかけ
その一方で彼の半面は僕を冷笑してゐた
身もだえながらも勝つたと言つてゐた
一瞬といへど三角関係の成立を僕は許せなかった

父のリクエストの曲は、美空ひばりの「お祭りマンボ」だった。