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花冷のままに一夜を過ごしたる

小山正見

冬に戻ったように寒い。雨まで降っている。住吉桜は満開のまま凍結しているようだ。正に花冷である。

一瞬の絶頂があり桜散る

のが普通だが、頂点で止まってしまうこともあるのだ。
昨年「花冷」という題の俳句の連作を所属している俳誌「梓」にだしたことを思い出した。
締切を一ヶ月間違えていて、催促され慌てて詠んだものだ。気分がイライラしていて、句にも影響している。

花冷    小山正見

満開の桜の中に閉校す
来賓となり桜湯の味薄し
歌舞伎座の涙を誘ふ花吹雪
一斉のクローン桜美しき
枝切りて弘前城の桜映ゆ
満開の老いさらばえた桜かな
支えられ延命措置の滝桜
花盛り鉄条網の向ふ側
漆黒の闇に息せし桜花
あんぱんの臍にあしらふ桜蕊
三つ指をついて出されぬ桜餅
糖尿故食べてはならぬ桜餅
花冷や十円惜しむモーニング
花冷や学校日誌に誤字脱字
花冷や妻の日記を盗み読む
高層のビルの隙間の山桜
桜には見向きもせずに花の宴

しかし、この花冷のおかげで今週末まで桜は持ちそうである。良かった!良かった!