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色変へぬ松の天まで届くほど

小山正見

「色の変へぬ松」というのは、秋の季語である。俳句を始めるまで知らなかった言葉だ。
「晩秋に木々が紅葉するのに対して、松が変わらず緑のままでいることを賞する」と歳時記にはある。
この松を見て思い起こすのは「奇跡の一本松」だ。東日本大震災の津波の際にただ一本残った陸前高田の松である。
高田松原に植林された七万本の中でただ一本津波に耐えて残ったのがこの松だ。現在は震災からの復興を象徴するモニュメントとして残されている。
天まで届くほどのこの松のある場所は、実は都内洗足池である。
洗足池は、勝海舟の墓所があることでも有名である。西郷隆盛の碑もある。池の周囲には、遊歩道が整備され、絶好の散策地となっている。
ここを訪れたのは、昨年の冬に続いて二回目である。
子どもたちと一緒に俳句の吟行に来たのだ。
調べたら、ぼくはその際に

点々と杭の上なる冬鴎

の句を詠んでいた。この句は「咲満ちて小山正見の俳句フォトカルタ」に入っている。

天気予報では、晴れだったのに、現地に着いたら弱い雨が降っていた。きのうは夏のように暑かったのに今日は寒い。
「秋時雨」とか「やや寒」などの季語を紹介した。

秋時雨手持ち無沙汰のボートかな
やや寒やオープンデッキは風の中

暫くレストハウスで休んでいると雲が切れて日が差して来た。
広い池が途端に輝きだした。

秋の水一切合切輝羅綺羅す

子どもたちと一緒にぼくもこうやって句を作る。
至福のひと時であった。