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縁のなきバー&スナック春寒く

小山正見

ついにぼくの人生とこういう場所とは縁がなかったと言わざるを得ない。若い時から憧れてはいたのだが、結局足を踏み入れることはなかった。
人生の楽しみは、酒と女と賭博というが、ぼくの人生はこれにほとんど関わりがない。女に関わりがないのはいい女と出会ってしまったからかもしれないが・・・(笑)
賭博はままごとのような麻雀を若い時にやったきりだ。競馬も競輪もしたことがない。
先日25年ぶりに雀卓を囲んだら、馬鹿づきをしてトップ賞を連続して取った。もうやめろという合図かもしれない。
酒が飲めないのが致命傷だ。酒が飲める奴は人生を3倍楽しんでいると思う。実に悔しい。
一度だけ、上品なクラブに連れて行ってもらったことがある。30代の半ばの頃だ。
授業や学級経営がうまく行かず、悩んでいた。自分は教員には向いていない、転職したいと真剣に考えていた。
出版業界にいたSさんという大先輩に相談した。その方に連れて行っていただいたのが、そのクラブである。
「やめない方がいい」
と真顔で説得された。その時、隣についたホステスさんが、背中で両手の掌を合わせて見せてくれたことが妙に頭に残っている。
それから数年後、ぼくは教員であることを諦めて管理職の試験を受けた。
父は反対だった。
「昔は食えなかったからいやいや管理職をした。むざむざ自分の自由な時間を捨てるようなものだ」
と言われた。
しかし、ぼくには管理職が合っていたようで学校に行くのが苦ではなかった。
相変わらず歓楽街には縁のない日々が続いた。それから30年だ。
憧れだけは未だに残っているようだ。