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紅き花あらばほぼほぼ百日紅

小山正見

久しぶりに田園調布のお気に入りのcafeで午後を過ごした。天気予報では夕立はないとのことだったので、多摩川(東急線の駅)まで歩くことにした。外に出ると意外と涼しい。これなら「夜の秋」と言っても差し支えなさそうだ。
銀杏並木を蓬莱公園に向かって歩く。田園調布は、都内でも屈指の高級住宅街だ。すれ違う人もほとんどいない。高い塀で囲まれた家、広大な庭の向こうから仄かな灯りが漏れる家。かの長嶋茂雄の家もこの近くにあるらしい。
ここに住んで固定資産税を払い続けるのは無理だろうが、歩き回るだけならタダだ。
緑が多いが、その中に時折、赤い花が見える。
百日紅(さるすべり)だ。ご存知のようにこの木は木肌がつるつるしており、「猿も滑って登れないほどだ」ということから「さるすべり」の名がついた。
同時に百日も赤い花が咲き続けるということから「百日紅」の名がある。知らなければ決して読めないとは言え、漢字と平仮名を併用して、様々な性質を表すことができるのは日本語の特長だろう。
夕闇の中、紅い花は目立つ。こんなに庭に百日紅を植えている家が多いのかとびっくりした。
ネットで調べていたら、庭に植えていけない樹木ランキングというのが出てきた。
なんと一位は、金木犀。匂いが強烈すぎるという理由だ。二位は、凌霄花(のうぜんかずら)。管理が大変。三位は桜。毛虫がやばい。それぞれもっともらしい理由があるが、そのうち、紫陽花が出てきた。水の気を吸い尽くすので恋愛運を奪うというのだ。百日紅も当然縁起が悪い。「受験に落ちる」「運気が落ちる」(笑)
こんな風に考えると庭に植える植物はそのうちなくなってしまいそうだ。
百日紅の花言葉は、「雄弁」「饒舌」「あなたを信じる」だそうだ。まあ、何でも言えるということだろう。
白い百日紅もある。こちらは百日白と呼ばれることもあるらしい。
加賀千代女に百日紅の俳句がある。

散れば咲き咲けば散りして百日紅

確かにそうだ。同じ花が百日咲き続けているわけではない。
楽しい散歩だった。また歩くことにしよう。