【大好評】「咲満ちて小山正見の俳句フォト カルタ」販売中!

生きることそれこそ全て稲の花

小山正見

著者の西野さんと出会ったのは、中原市民館で行われた第九回の「中原区100人会議」だった。100人会議では、一回に5人が登壇し10分ずつ話をする。二人目に登壇したのが西野さんだった。普通のおじさんなのに、立ち上がっただけで、一言を発しただけでオーラが漂ってくる。圧倒的な存在感だ。世の中にはこういう人がいるのかとびっくりした。
西野さんは、今や全国的に有名な人だ。
NHKの「ドキュメント72時間」という番組がある。一昨年、2022年の視聴者アンケートで第1位だったのが「どろんこパーク 雨を走る子どもたち」で、この施設の責任者が西野さんだ。西野さんは、不登校の子どもたちの居場所を作るために生涯を捧げてきた。
ぼくは、この番組を録画して3度観た。この中に学校現場の閉塞感を打ち破るヒントがいくつもあるように思えた。
ぼく自身、現役時代「楽しい学校」を作ろうと頑張ってきた。しかし、学校サイドからしか物を見られなかったのも事実だ。
不登校児童・生徒は今や全国で30万人という。学校制度そのものが制度疲労を起こしているとしか考える他ない。
だいたい、同じ年齢の子どもを集め「君たちは同じ能力を持っている」という前提で集団を組ませ、後は「君らの努力次第」とされるのだからたまったものではない。
そして、この集団の「勝者」が政策決定・運営者になっていくのだから歪みはますます大きくなる。
そして、その歪みが不登校の子どもたちやその家族を直撃している。

本書は、不登校で悩んでいる家族に手を差し伸べている本だ。
「なぜ普通ができないか」
「昼夜逆転をどうする」
「一生ひきこもったらどうしよう」
など、極めて重い問題に正面から立ち向かっている本だ。
同時に、この本は、教師にも子どもを持っているすべての親御さんにも読んでもらいたい本だ。
ぼくは、読みながらここに出てくる頭の硬いお父さんは、ぼく自身と重なったし、教師の一所懸命が教師の自己満足でしかないことに衝撃を受けた。
「こうあるべき」「こうあるはず」から解放されることは何と難しいことか。