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猫の恋かれてしまつた木の根元

小山正見

忸怩たる思いだ。何で枯れてしまったのか、否枯らしてしまったのか

我が家は緑の多いうちだった。煉瓦塀には、アイビーが繁茂している。庭では紫陽花が花をつける。
ローズマリーやラベンダーの鉢がいくつも並んでいた。
「我が家の緑」と題するフォトブックを作ったこともあるほどだった。

妻が植物を愛していたからだ。
妻は毎日植物に水をやった。散水用の長いホースで庭の隅々まで。暑い日も寒い日も。
その妻が施設に入居した。それを悲しむように、ラベンダーが枯れた。あの強靭なローズマリーも枯れた。気づいた時には手遅れだった。
緑豊かだった家の前には殺風景な大きな植木鉢だけが無惨に残された。。
僕のせいだ。

意を決して、今日近くの花屋で水色の可愛らしい小さな花の鉢を買い込み、植えた。うちの前が少し華やかになった。
少し嬉しかった。

枯れ木の根元の猫に恋をさせてみたくなったのは、こんな気分のせいなのかもしれない。