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灯の涼し持つべきものは友である

小山正見

暑い日だった。もう完全に夏だ。
待ち合わせ場所は、品川のつばめグリルである。
店の名前は特急つばめに拠る。特急「燕」が誕生したのはは1930年のこと。東京・神戸間を9時間で結び、2時間20分も短縮した。
つばめグリルは、その特急「燕」と同じ年に新橋に生まれた。現在は、各地に店舗を展開しているので、皆様ご存知。品川店は、現在の基幹店である。
写真の三人は、左がアイデアマラソンの樋口健夫氏。真ん中は私小山正見。右はT氏としておく。
写真を見ると、二人のおいぼれを引き立て役にT氏の若さが輝いているようだ。そのT氏がこの4月に校長に昇進したので、そのお祝いという意味合いの会だった。
T氏は、手土産に新しい学校での「学校だより」などを持ってきてくれた。紙面から若い校長の意欲が溢れ出てくるようだった。
20年近い付き合いだ。20代だったT氏は島の小さな学校に勤務していた。そこに樋口氏と私が出張授業で出かけたのだ。樋口さんは、発想法の授業を、私は俳句の授業をした。
調布の飛行場から小さな飛行機に乗った。確か定員は16人ぐらいだったと記憶している。
秋だった。
島に着いて驚いたことがある。紅葉樹がないのだ。
「島では秋が来たことをどうやって感じるんですか?」
と聞いた。
「西の風が吹くんです」
印象的だった。

つばめグリルでの二時間があっという間に過ぎた。
樋口氏がキーホルダーを取り出して、一枚のコインを見せた。
「これはあの時、やんちゃそうな子どもがくれたコインですよ」
この20年間、樋口さんはずっとこれを身につけていたのだ。
「彼はどうしている?」
「沖縄の離島でネーチャーガイドをしています」
あの時の青年教師は校長先生になり、やんっちゃそうだった子どもは、一人前に生きている。
20年という時間が確かに過ぎていたのだ。