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歳晩やディープな街の奥の奥

小山正見

「よく色々なところに行っていますね」と言われる。確かに、そう言われればそうかもしれない。
先週から今週にかけて、芭蕉記念館にも行ったし、現代俳句協会の事務所にも行った。更に三日間も出張俳句教室に出かけた。
今日は、葛飾区の立石である。区役所の前にある葛飾区のナンバースクールと呼ばれるような学校を訪問した。
ぼくが葛飾区に勤務していた頃、この学校の校長は向山行雄だった。彼は、教育法則化運動で一躍有名になった向山洋一の弟である。飛び抜けて頭の回転が早い切れ者だった。その後中央区銀座にある泰明小学校の校長になり、全国連合小学校長会の会長も務めた。ぼくは、彼に呼ばれて、泰明小学校で俳句の授業をしたことがある。
今も彼は大学で教鞭を取っている。
授業は三年生だった。入った瞬間、教室の明るさ、子どもたちの素直さが伝わってくる。
担任の先生や管理職の先生のご配慮もあり、実に楽しい時間だった。更にかつて一緒に仕事をした先生方とも会うことができ、話に花が咲いた。
https://school.katsushika.ed.jp/swas/index.php?id=seiwa_e
立石は、再開発の真っ最中だった。駅の北側には何もない。高い「鉄板」で囲われた無機質な空間が広がっている。
五年後くらいには、ここの場所に葛飾区役所も入る大きなビルができるのだという。なんだか、想像できる。何処かで見たような街がまた一つできるのだ。今は、チェーンのコーヒー屋一つないが、おしゃれなカフェもできるに違いない。
立石と言えば、「呑んべ横丁」だ。すでに影も形もない。昔がどうだったか思い出すこともできない。
しかし、南口に回ってみると、あった。
「立石仲見世」正に昭和レトロの商店街、飲屋街。
人間は、広くて明るくて健康的なものばかりが好きなわけではない。どういうわけか、ゴミゴミした狭苦しい隠れ家が時には恋しくなる。
動物的な本能かもしれない。安心できるのかもしれない。
最近の学校建築にも、そうした観点からかちょっとた隠れ家的な場所が設けられることもあるようだ。
一渡りこの辺りをゆっくり歩き、帰路に着いた。
学校も飲屋街も刺激的な場所だった。