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梅雨深しスカイツリーは雲の中

小山正見

亀戸文化センターでのこども俳句教室に向かう途中。面白い光景に出会った。写真がそれだ。JR錦糸町駅のホームからのものである。スカイツリーの塔の部分だけが雲の中に浮かんでいる。
スカイツリーは、東武伊勢崎線の業平橋にあった操車場の跡地に建てられた。
ぼくは、その業平橋の駅の近くに三十年以上住んでいた。しかし、スカイリーの工事が始まった2008年にはすでに江東区に住まいを移していたので、スカイツリーには全く縁がない。正に雲の向こうの出来事であった。
スカイツリーが出来て、東武線は変わった。走る電車は、スカイツリーラインになった。
業平橋駅はとうきょうスカイツリー駅に名称変更された。
ご存知のように「業平橋」の駅名は、平安時代の歌人を代表する一人、在原業平に依る歴史的な名前だ。
「名にしおはばいざ言問はんみやこどり我が思ふ人はありやなしやと」
この歌が隅田川にかかる言問橋の由来だ。
小倉百人一首の中には業平の
「千早ふる神代もきかず竜田川からくれなゐに水くくるとは」
がとられている。その業平が駅名から消えた。
スカイツリーができて、この地域は変わったと言えば変わった。業平橋から押上にかけて、一大ショッピングモールが作られ、水族館やプラネタリウムも開館した。ガード下にもおしゃれな店が並んでいる。
北十間川もきれいに整備された。その北十間川に架かるのが業平橋である。
しかし、その業平橋を渡った景色は昔とさほど変わらない。
ぼくが書斎がわりに使った「ジョナサン」も夕飯でお世話になった中華の「北三」もそのままだ。
業平橋から新橋まで行く都バスがあった。その都バスの停留所はスカイツリー駅前に変わったが、路線の名前は「業10」のまま中途半端に残っている。