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木蓮の淡き毛深き芽立ちかな

小山正見

この木蓮は、妻がお世話になっているグループホームの近くにある。面会に行くたびにこの木蓮の前を通る。

認知症を患っている妻をホームに入れてから二年半に近い。(詳しくは、句集『大花野』朔出版刊参照)

コロナ下であったが、ほぼ毎週ホームに行き、妻に会うことができた。従って、木蓮とも毎週お目にかかった。

芽吹、花が膨らみ散っていく。木が緑になり、大ぶりの葉に覆われた。

夏には葉が黒く焼き焦がれた。あまりの猛暑のためか、それとも台風による塩害か。
やがて冬になる。葉は散るが、枝の先に花芽が既についている。

春に向かって、その花芽が次第に大きく太っていく。木蓮の花芽の特徴は産毛が生えていることだ。それが太陽の光にキラキラ光る。

妻の病状は思わしくはない。
この二年半の間に歩けなくなり、車椅子になった。体の拘縮が始まり、手が上がらない。言葉もほとんど出なくなってきた。

妻がホームに入ってから二回目の春である。三回目も四回目も五回目も・・・木蓮の芽吹きを見たいと願っている。