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春近し西海岸にゐるやうな

小山正見

アメリカ西海岸に行ったことはない。
しかし、ここがどんな雰囲気かと問われると、思わずそう答えてしまいそうだ。
座っているベンチの隣には、卓球台、貸し自転車が並びスポーツカーがさりげなく置いてある。表示は英語ばかり。
ビジネスマンらしき外国人がパソコンのキーを叩いている。
雑誌のモデルの撮影だろうか、10人近くの若者が、風のように通り抜けていく。
打ちっぱなしの壁にいかにもアメリカ風の写真をやモダンアートが飾られている。
なかなかモダンだ。
(モダンは古いか 笑)
ここは、川崎殿町にある東急レイホテルの一階だ。
大師線の終点小島新田駅から歩くと20分はかかる。バスで来るのも面倒なほど交通の便は悪い。
なぜこんなに不便な土地にこんなにお洒落なホテルがあるかと言えば、この場所が国家戦略特区に指定され、国際競争力を強化するための研究機関が集まっているからである。
称してキングスカイフロント。川崎市の誇る最新産業基地の一角にあるからだ。
キングは王様のことかと思ったら「Kawasaki INnovation Gateway」の頭文字をとってものだという。確かに王様などという時代錯誤の名前を付けるはずはない。
ホテルの裏は多摩川の景色が広がり、その向こうは羽田空港。一分おきに飛行機が飛び立っていた。
空は明るく広い。光はすでに春に近い。
ここから日本の最新技術がアメリカ西海岸へ、そして全世界に飛び立ってもらいたいものだ。