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春近し人情深川ご利益通り

小山正見

実に良い名前だ。「人情深川ご利益通り」とは!
ここは、門前仲町。深川不動尊の参道である。約百五十メートルほどの中に四十ほどの商店が軒を並べている。漬物屋もあれば、江戸小物を売る店もある。
老舗の煎餅屋は「其角」という名だ。由来はわからないが、おそらく芭蕉の門人であった宝井其角の名をとったのではあるまいか。「日本一硬いせんべい」というのが、この店の売りだ。
この日は、近くの江東区立数矢小学校で「俳句の授業」があった。この数矢小学校の授業のある時は、ぼくは必ずご利益通りのカフェでカフェラテを飲む。少し値段は高いのだが、何しろ「ご利益」があり、授業もうまく進むこと間違い無しだからである。緑色の気持ちの良いソファに座って外を眺め、授業の準備をする。これもまた至福の時間だ。
朝のまだ早い時間からひっきりなしに参拝の人が通る。
お参りをして「ご利益をいただく」のは日本人の生活の中に深く染み込んでいる。
安産祈願、お宮参りから始まり、七五三、お彼岸の仏事、初詣etc
月の初めには必ず神社に詣でる人もそれなりにいる。
川崎大師もそうであったが、深川不動尊でも9時から17時までの間に五回護摩祈祷が行われる。参拝は無料だが、護摩札を焚いてもらえはご利益は保証されるに違いない。
法螺貝の音が響きわたり、読経の声が美しい。その中で護摩の火が高く上る様は上質なエンターテーメントと言って良いだろう。
その上、お守りも買い求めればご利益は確実なものになるに違いない。
不動尊のお帰り口の横断幕には矢印の上に(富岡八幡・駅へ)とあった。日本の神様はみんな仲がいいのだ。西洋の一神教とは違う。神様も共存共栄。それが日本であり、日本人なのだと思う。人情深川ご利益通りとはよく言ったものだ。
正見