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春夕焼明日天気になあああれ

小山正見

そう言えば、子どもの時下駄を放り投げて「明日天気になぁぁれ」とやったものだ。今でも脱げた靴で占うこどももいるようだが(笑)
夕焼けは美しい。夕焼け空だと次の日は晴れると言われていた。西から天気が変わることを昔の人は知っていたのだろう。
この夕焼けの美しさに気付いたのは五十六歳の時だった。その理由は俳句を始めたからだ。
俳句を始めたら、途端に世の中が美しくなった。自然がないと言われた都会の路地にも可憐な花が咲いていることに目がいくようになった。雲の移りゆく変化が面白くなった。
私は二十四歳で教職について六十二歳で退職するまでその職から離れなかった。
途中で自分は一流の教師にはなれないと悟って管理職に転向した。
若い時は、夏休みも毎日学校に行った。水泳の指導が楽しかった。土日はサッカーの指導の手伝いをした。
帰宅してからガリ板で学級通信を作った。自分の生活には学校しかなかった。
管理職になると、朝も早くなり、日のあるうちに帰宅することは稀になった。
いつ桜が咲き、散ったのかもわからなかった。そんなことは興味の外にあった。
年次休暇を使わないことが誇りで、自分で夜八時を定時と決めていた。夜七時に学校を出る時は「今日は一時間休で帰るからね」と冗談を言った。今から考えるとブラックな生活だったが、そのブラックが実に楽しかった。
しかし、俳句にもっと早く出会えばよかったと思う。僕の人生は十倍豊かになったかもしれない。(笑)
こんな言葉がある。
「他人と過去は変えられないが、自分と未来は変えられる」
過ぎ去った過去に愚痴を言うのは愚の骨頂だ。
私は今七十六歳。父の亡くなった歳まであと十年ある。
それまで夕焼け空の美しさを存分に堪能することにしよう。