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春の雨見渡す限り傘である

小山正見

久しぶりの雨だ。大船渡の森林火災がこの雨で鎮火に向かってくれると嬉しい。
さて当たり前の話だが、雨が降ったら傘を差す。
子供の頃、傘は貴重品だった。なくそうものならひどく怒られた。それが今はビニール傘。家の中にも溢れている。どこかに置き忘れたい気分にすらなる。
調べた訳ではないが、この「傘」という習慣が始まったのは、結構近代なのではないかという気がする。
農作業などをする時に傘は使わない。長い距離を移動する時も重い傘をずっと差し続けるのは至難だ。だから、蓑とか頭に被る笠という選択になる。
「傘」が便利なのは、近距離のちょっとした移動の時だけだ。つまり、それは都市生活と関係している。大工場が生まれ「通勤」という必要が生まれたことが傘を必需品にしたことに思い当たった。
傘で思い出すのは井上陽水の「傘がない」という大ヒットした歌だ。
「問題は今日の雨 傘がない」
だったろうか。
大学紛争、七十年安保で天下国家を論じ疲れ切った頭にこの歌が刺さった。問題は国家ではなく、傘なんだ!この歌で僕らの世代は日常の生活に戻っていった。
もう一つ思い出すのは佐野洋子の「おじさんのかさ」という話だ。この話は小学校の教科書にも取り上げられた。
決して傘を差さないおじさんが、あることをきっかけに傘を差すというお話なのだが、僕の頭に次の台詞が残っている。
「あら かさをさしたんですか 雨がふっているというのに!」
寒くて嫌だが、今日の雨は春をもたらす恵の雨だ。
傘を差して出かけることにしよう。

春の雨見渡す限り傘である