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振り抜いてシュート一閃青葉風

小山正見

生まれて初めてリーグのサッカーの試合を観に行った。場所は等々力スタジアムである。川崎フロンターレの本拠地。ぼくも川崎市民だから、一応フロンターレのファンの一人ではある。
生のプロ野球を観に行ったのも二十年以上前だから、こうしたイベントは久しぶりだ。
まず驚いたは、屋台が立ち並び、さながら食のテーマパークになっていることだ。サッカーだけではない楽しみも用意されている。聞けば、この日は東日本大震災の津波で大被害に遭った陸前髙田のフェアも行なわれていたらしい。
会場はフロンターレの青のユニフォームを着た人達で溢れている。
子ども向けのイベントもある。
大きな的を目がけてシュートを蹴る。高得点が出たら賞品がもらえる仕組みだ。しばらく隣で眺めた。どの子のシュートも力強く勢いがあってびっくりした。
誰も信じないかもしれないが、二十代のぼくはこどもたちのサッカークラブの指導をしていた。正直に言えば、その手伝いだが(笑)・・・
メキシコオリンピックで日本が銅メダルを取ったあとで、サッカーという競技が子どもたちの中にも普及し始めた頃だったと思う。
勤めていた足立区立江北小学校にY先生が異動してきた。その彼がサッカークラブを作りたいというので、応援した。半日授業があった土曜日の午後は毎週練習に明け暮れた。そして、日曜日は試合だ。
Y先生は、子どもたちに本格的なサッカーを教えた。パス回しから相手を崩しシュートに持ち込む。きれいなサッカーだ。
当時は、サッカーは冬だけのスポーツだった。そこで、夏は野球をしているチームが冬はサッカーに参入してきた。そして、そのチームがやたら強い。
作戦は単純。キック&ラッシュである。とにかくボールを前に蹴り、集団で押し寄せる。ゴール前でもみ合っているうちに、そのこぼれ球をシュートに持ち込んでしまう。随分これでやられた。
きれいなサッカーは、キック力がなければ成り立たないと思った。しかし、Y先生は戦術を変更しない。きれいなサッカーを指導し続けた。チームは少しずつ強くなり、試合にも勝てるようになっていった。
その辺りで僕は江東区の学校に転勤してしまったのだが、サッカーという競技の面白さを体得した二十代ではあった。