【大好評】「咲満ちて小山正見の俳句フォト カルタ」販売中!

夏シャツに一点物のハンチング

小山正見

言わずと知れたウイリアム・モリスの柄である。ウイリアム・モリスは、十九世紀後半に活躍したイギリスのアーティストで「モダンデザインの父」と呼ばれた。
この帽子は、東横線の学芸大学にある帽子屋Viridianであつらえてもらったものだ。
学芸大学は、祖父が昔に住んだ土地だった。母が懐かしがり、何度か付き合って散歩した。古い鰻屋があり、一緒に食べた。
母が他界した後、その鰻屋を探して学芸大学に降りた。あったはずの鰻屋は姿を消していて、代わりに見つけたのが帽子屋Viridianだった。我が家の家系は帽子好きである。母はおしゃれで幾つも帽子を持っていたし、父も晩年まで帽子を愛用していた。
時々、Viridianに出かけるようになり、帽子を作ってもらうようになった。
あつらえなので、やはり値段はそこそこに張る。しかし、生地を選び自分だけのこの世に一つしかない帽子を手に入れるのはなかなかの喜びだ。
「一点豪華主義」
服装全てを豪華にすることはできないが、一点だけなら可能だ。この前は、古着屋で280円の夏シャツを購入した。ほとんどの衣服はユニクロで揃えていても帽子だけ豪華だとリッチな気分になるから不思議だ。
友人から「洒落た帽子だなぁ」と褒められると、それだけで幸せになる。
帽子一つで幸せになれるなら安いものだ。
ある時、喫茶店でハンチングをテーブルに置いてコーヒーを飲んでいたら、お隣の妙齢なご婦人から声をかけられた。
「素敵なお帽子ですね」
そこから話が弾んだ。俳句の話になった時、そのご婦人がバッグの中から歳時記を取り出したのには驚いた。
そのご婦人は、今はぼくの主宰する句会の仲間になっている。帽子の奇跡だ。
帽子の奇跡はまだ続く。
Viridianの店主の小林愛さんからお店で俳句ができないかと提案されたのだ。
生まれたのが、「帽子屋de俳句」のイベントである。
すでに二回実施し、いずれも好評だった。
三回目は、今月6月23日(日)の14時スタートである。
興味のある方は、ぜひどうぞ。
しかし、ドレスコードがある。帽子を被ってくることだ。(※お店でも貸してくれる)