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四方八方(よもやも)を揺らし蟬時雨蟬時雨

小山正見

俣野別邸は、1939年(昭和14年)に住友家の第16代当主住友吉左衛門が建築させた和洋折衷の住宅である。この建物は、2000年に住友家が相続税の物納として国に所有権が移った。
建物は、重要文化財に指定されていたが、放火により消失した。2016年、横浜市によって当時の設計図を元に復元され、敷地は公園として整備された。
現在は、俣野別邸庭園として横浜市の風致公園となっているがホームページなどを見ても住友家の別邸だったことには一言も触れられていない。
建物を中心とした内苑と外苑に分かれ、敷地面積は、5万平米を超える。
戸塚や藤沢からバスに乗り、鉄砲宿で降りればすぐだが、藤沢からタクシーでも1200円程で着く。
暑い日だったが、門を入ると空気が変わった。欅や楠の大木が聳え、緑に満ち溢れている。住宅の前の芝生の庭では、芝刈機が轟音を立てているが、それさえも優雅に見える。時間がゆっくり流れるとはこういうことかと思った。
園内を一周した。辺り一面は蟬時雨。主流はみんみん蟬だが、中に油蟬や法師蟬の声も交じっているようだ。あとはただただ風の音。
邸内には、「木漏れ日テラス」という喫茶室がある。
客は、誰もいない。コーヒーは450円。
パンフレットの説明には、集会室があり使用料は半日1000円とあった。破格の安さだ。園内を巡って句会ができる。吟行には便利な場所に違いない。
世の中には、こんな場所がありここで暮らしていた人もいたのだ。