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一二滴垂らす天然レモンかな

小山正見

どうも写真がイマイチである。食べ物の写真も俳句も旨そうでないと使い物にならない。
しかし、実物は旨い。それにレモンの汁を垂らしただけで風味がぐんと増す。
お茶の水レモンのたらこスパゲッティだ。いつの間にか1400円に値上げになっていた。これに苺ミルクが付く。こたえられない。
子どもの時のスパゲッティはミートソースかナポリタンと決まっていた。
忘れられないスパゲッティはイタリアローマで食べたスパゲッティだ。平麺のカルボナーラ風のホワイトソースだったことは覚えている。
20代の終わり。妻とヨーロッパ10日間というツアーに加わったのだ。まだ円が360円の時代だった。
ロンドンで硬い肉のステーキを食べたが、あれが人生初めてのステーキ体験だったかもしれない。
パリの街角の小さな食堂で、その家の子どもと思わしき男の子が大盛のグリンピースを食べていたのが印象的だった。
そして、ローマ。トレビの泉などを回り、夜は野外の円形劇場で歌劇を観た。四頭立ての馬車が登場して驚いた。
足を伸ばして行ったポンペイの遺跡の光景はまだ眼裏に貼り付いている。
そしてスパゲッティだ。
あの時のスパゲッティを超える味に出会っていない。
しかし、本当はそんな気がしてるだけなのだろう。
一期一会の体験があの時の味を作り出しているのだろう。
しかし、そうは言っても、もう一度はローマに行ってあの時のあの味を味わってみたい。儚い夢であろうか。