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しみる日の虚子記念館休館と

小山正見

「しみる」は漢字で書けば恐らく「凍みる」であろう。ひどく寒い日を指す小諸の方言である。
最初の計画では、飯盛山の登山をして、小淵沢から東京に帰る予定でいた。
朝起きたら、雨。朝の気温は零度を下回っていた。
Iさんの提案で、飯盛山を諦めて、小諸の虚子記念館に行くことになった。
作りかけの高速道路に乗って小諸に向かう。黄葉が美しい。
高浜虚子はご存知のように、近代俳句の祖である。虚子編の歳時記は今も広く使われている。 
「花鳥諷詠」を旗印に俳句界の興隆を作り上げた立役者である。
鎌倉に虚子・立子記念館がある。今月のはじめに所属する結社の吟行で訪れたことは、前に述べた。
再掲すれば、その際ぼくは

虚子立子椿高士や秋うらら

と詠んだ。今の俳句界への連続性を強く感じたからである。
なぜ小諸に高浜虚子の記念館があるかと言えば、戦争中の疎開から戦後にかけての4年間、虚子はこの地に住んだからだ。写真はその旧居である。
虚子の句集は『句日記』とか『五百句』など何の変哲もない形で刊行されている。
多くの名句を産んだが何の変哲もない句も山のようにある。
そして、何の変哲もないことこそ、虚子の考え方の表れなのだとぼくは思う。
虚子は、「俳諧須菩提(ズボダ)経」なる文章の最後に「天才ある一人も来れ、天才なき九百九十九人も来れ。」と述べる。
虚子の中にも一人の天才と九百九十九人の凡才が同居している。そしてそれが俳句というものなのだと虚子が言っているようにぼくは思ったりする。
近所に住んでいるAさんが先日「先生は俳句をやるそうだから」と一冊の本を持ってきてくれ、貸してくれた。
題名をみたら『覚えておきたい虚子の名句200』という本だった。
今ページをめくってみたら、次の句がでてきた。

手を顔を撫づれば鼻の冷たさよ

今日は実に寒かった。