【大好評】「咲満ちて小山正見の俳句フォト カルタ」販売中!

遥かなる「相撲」の記憶自由が丘

小山正見

自由が丘は、今大規模再開発の真っ只中である。
この区画には、眼鏡の金鳳堂があり、蕎麦のさらしんもあった。洋菓子のモンブランもあった。シュークリームは逸品だった。少し洋酒めいたものを垂らしたサバランを知ったのもモンブランだった。東郷青児の絵を子どもながらに美しいと感じた。
高校生の時、どうしたわけか一人で入りケーキを注文した。そうしたら、ケーキの中から木の釘が出てきた。これはどう見ても釘だとら確かめて、店員さんにその旨を告げた。店員さんは「申し訳ありません」と深く頭を下げ、代わりのケーキを持ってきてくれた。得した気分だった。しかし、食べたらそのケーキにも異物が入っていた。結局ぼくはケーキを三つ食べ、お土産のケーキも貰って帰った。
その時「ケーキは一つで十分だと」と悟った。そんなわけで、甘党のぼくもケーキバイキングには食指が動かない。
自由が丘には「ヴェニス」もある。カフェ・ラ・ミルもあった。両方とも父の記憶に繋がる。それにスタバもエクセルシオールもお洒落な喫茶店もよりどりみどりだ。
再開発されていない路地の奥に洒落たお店を見つけると幸せが一つ増える。
自由が丘はそんな町だ。
再開発で果たして自由が丘は魅力を増すのか?いささか心配である。
一番初めに自由が丘に行ったのはいつだろう。
記憶を遡るとテレビの野外放送に行き着いた。自由が丘の駅前の街頭テレビの大相撲。父に肩車されて見た取組の分解写真がまだ脳裏に残っている。