俳句フォトエッセイ2024.12.07王禅寺緑のままの冬紅葉小山正見王禅寺は、川崎市麻生区にある。丘陵を切り開いて団地や住宅が造成された麻生は新しい街だ。多摩区から分離した一九八二年には九万六千人だった人口は令和四年には十八万人を超えている。丘麻生区は、男女共平均寿命が日本一になったことでも有名になった。バスを虹ヶ丘営業所で降りて、王禅寺に向かった。バス通りを外れしばらく行くと寺の門がある。王禅寺には、公園側からも入ることができるが、ぼくはこちらの道が好きだ。門を抜けると静かな林だ。鳥の鳴き声だけが響く。風が竹の葉を揺らし、出会う人もいない。静かだ。王禅寺は川崎の名刹の一つである。高野山三世夢空上人が開山。関東の高野山とも言われる。境内には、日本最古の甘柿の原種、禅寺丸柿の原木があることでも有名だ。甘いが実が小さく種も大きいので、市場にはなかなか出回わらないのが残念だ。麻生区内の学校には禅寺丸柿が植えられ、給食にも供されていると聞く。詩人北原白秋は王禅寺を訪れた日のことを「王禅寺に想ふ」という文集に記し、「一首では歌ひつくせないその風色である」と述べた。立冬も過ぎ、遅れ気味の紅葉も進んでいるのではないか。仁王門にかかる真っ赤な楓を期待した。しかし、カエデは緑のままだった。寺の西には広大な王禅寺ふるさと公園が広がっている。子どもたちが走り回り、年老いた夫婦が手をつないで散歩していた。小春日和の一日がゆっくりと過ぎていく。
王禅寺は、川崎市麻生区にある。丘陵を切り開いて団地や住宅が造成された麻生は新しい街だ。多摩区から分離した一九八二年には九万六千人だった人口は令和四年には十八万人を超えている。丘麻生区は、男女共平均寿命が日本一になったことでも有名になった。
バスを虹ヶ丘営業所で降りて、王禅寺に向かった。バス通りを外れしばらく行くと寺の門がある。王禅寺には、公園側からも入ることができるが、ぼくはこちらの道が好きだ。門を抜けると静かな林だ。鳥の鳴き声だけが響く。風が竹の葉を揺らし、出会う人もいない。静かだ。
王禅寺は川崎の名刹の一つである。高野山三世夢空上人が開山。関東の高野山とも言われる。
境内には、日本最古の甘柿の原種、禅寺丸柿の原木があることでも有名だ。甘いが実が小さく種も大きいので、市場にはなかなか出回わらないのが残念だ。麻生区内の学校には禅寺丸柿が植えられ、給食にも供されていると聞く。
詩人北原白秋は王禅寺を訪れた日のことを「王禅寺に想ふ」という文集に記し、「一首では歌ひつくせないその風色である」と述べた。立冬も過ぎ、遅れ気味の紅葉も進んでいるのではないか。仁王門にかかる真っ赤な楓を期待した。しかし、カエデは緑のままだった。
寺の西には広大な王禅寺ふるさと公園が広がっている。子どもたちが走り回り、年老いた夫婦が手をつないで散歩していた。
小春日和の一日がゆっくりと過ぎていく。