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天高し世界へ拓くレールウェイ

小山正見

東急東横線の元住吉駅である。
長いエスカレーターを上り、改札口のあるこの階には、こんもりと木が植えられている。ベンチも設置され、ちょっとした憩いの空間だ。2006年に新駅舎として開業した。
昔は東横線だけだったが、今は目黒線も乗り入れ、乗降客は一日六万人近いと言われる。
ぼくは小学校一年生から高校三年まで通学で元住吉駅を利用した。
「各駅停車」というアナウンスが分からず「各駅電車」とばかり思い込んでいた。男の子のぼくが車内で痴漢に遭ったこともある。
駅員さんが改札鋏をチョキチョキさせていた。鋏を手でくるくると回していた。格好いいなと思った。定期券の期限切れを瞬時に見分ける技に舌を巻いた。
何れにしても東横線と元住吉は、ぼくにとって世界の入り口だった。
田園調布、自由が丘、渋谷・・・
不思議と横浜方面には行かなかった。武蔵小杉で乗り換えて川崎にも行かなかった。だから川崎市民であるにも関わらず、川崎のことは何も知らなかった。
東京新聞の「かわさき俳句フォト」を引き受けてはじめて川崎という町を知った。
今は、東京だけでなく、横浜へも行くし、南武線に乗り換えて川崎へも行く。
しかし、何れにしても元住吉のプラットフォームがぼくを世界に連れて行ってくれる始点になっていることには違いない。