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どうしても勿忘草をおまえに

小山正見

勿忘草は、「わすれなぐさ」と読む。
明治時代に日本に入って来たらしいが、野生化し、全国分布している。
元々は多年草のようだが、暑さに弱く夏を越せないとも聞く。
上田敏の名訳詩集『海潮音』には「わすれなぐさ」という訳詩がある。ドイツの詩人ウィルヘルム・アレントの詩だ。

流れの岸の一本は、
御空の色の水浅葱、
波、ことごとく、口づけし
はた、ことごとく、忘れゆく

叙情的できれいな詩だ。
しかし、僕が勿忘草と出会ったのは学生運動華やかな大学生活の中であった。
「国際学連の歌」とか「がんばろう」など勇ましい歌が歌われる中で、芹洋子が歌いヒットした「忘れな草をあなたに」はしみじみと心に届いた。妻と出会った頃だ。これも青春の抒情だろう。
YouTubeで久しぶりに聴たら思わず涙が出た。

土を用意し、勿忘草の苗を植えた。ホースで水をたっぷりあげた。大きな鉢は、瞬く間に勿忘草で一杯になった。
それをしげしげと眺めている。
水色の小さな花が無数に風に揺れている。